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「桜月夜」

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  清水へ 祇園ををよぎる 桜月夜   こよひ逢う人 みなうつくしき          与謝野晶子     独身で   大阪は淀屋橋勤務の頃   仕事を五時に終えて   四人の仲間と   京阪電車に乗って   円山公園の枝垂れ桜を   愛でに行ったことがあった   赤い毛氈を敷いた酒席で   満開の枝垂れ桜を見上げながら   日本酒の盃を重ねた   忘れ得ぬ   桜月夜の   花浄土 「花明り」 東山魁夷

「回 文」

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「くさくさの なはしらぬらし はなもりも     なはしらぬらし はなのさくさく」     後ろから、読んでみてください     これが回文     名も知らぬ花が     人知れず     咲いている     あれが     わたしの 姿   有名な回文和歌には、桃山時代の下記がある。   なかきよのとおのねふりのみなめさめ   なみのりふねのおとのよきかな   そして古きは平安時代の下記の回文和歌である。   むらくさにくさのなはもしそなはらば   なぞしもはなのさくにさくらむ   元来は中国の漢詩に見られ、英語などでも   回文が見られるらしい。 旧浜離宮恩賜公園  

「古今和歌集 恋歌十選」

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  「ほととぎす鳴くや皐月のあやめぐさ  あやめもしらぬ恋もするかな            詠人不知 」 「すみの江の岸に寄る波夜さへや  夢のかよひぢ人目よくらむ          藤原敏行 」 「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ  夢と知りせば覚めざらましを           小野小町 」 「露ならぬ心を花におきそめて  風吹くごとに物思ひぞつく          紀 貫之 」 「ありあけのつれなく見えし別れより  あかつきばかり憂きものはなし            壬生忠岑 」 「君や来し我や行きけむ思ほへず  夢か現か寝てかさめてか          詠人不知 」 「かきくらす心の闇にまどひきに  夢うつつとは世人さだめよ          在原業平 」 「月やあらぬ春や昔の春ならぬ  わが身ひとつはもとの身にして          在原業平 」 「色見えでうつろふものは世の中の  人の心の花にぞありける           小野小町 」 「人知れず絶えなましかばわびつつも  無き名とぞだにいはましものを            伊 勢 」

「枕草子と中宮定子」

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 「枕草子が中宮定子の頌徳記といわれるのも当然です。枕草子もあらゆる意味で、中宮のおつくりになったもの、といっても過言ではありますまい。心ゆくもの、、うつくしきもの、あてなるもの、心ときめくもの、めでたきもの、すべては中宮のものであり、すべては中宮のことなのです。」      白州正子  「たしなみについて」( 1948 年) 白州正子は、また「歴史を通じて、ほんとうに円満に、すべてを備えた美しい女性といったら、まず第一にあげたくなるのが、この中宮様です。」とも書いている。 白州に言わせれば、清少納言は中宮定子という「美しい姿と心」の、その語り部であったに過ぎないのであろう。 こうしてみると、「枕草子」を産んだ中宮定子、そして「源氏物語」を支えた中宮彰子の二人を后とした、一条天皇とはどのような人物であったのだろう。

「秋 思」

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「永劫の 涯に火燃ゆる 秋思かな         野見山 朱鳥 」 秋の夕陽が めらめらと 燃えながら 遠い山の端に 落ちてゆく わたしの想いが 落ちてゆくのは    ただひとつだけ あの夕陽の 真紅の色のように そう あの女(ひと)のもとへ  

「三尾(さんび)の紅葉」

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 周山街道から登って、三尾さんび(高雄・槇尾・栂尾)の紅葉を見たことがある。その年は冷え込みが厳しかったせいか、例年になく京都も見事な紅葉となっているようで、三尾の紅葉はまさに今が盛りであると思われるほど綺麗であった。 栂尾・高山寺の石水院(国宝)で、「明恵上人樹上座禅像(成仁作)」と黒板に水墨で書かれた「阿留辺幾夜宇和」を見て、後鳥羽院から賜った学問所(石水院)における明恵上人に、少し触れてくることができた。境内の遺香庵の紅色の紅葉が、実に鮮やかであった。 栂尾・高山寺境内の遺香庵の紅葉

「あかあかや月」

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「あかあかやあかあかあかやあかあかや      あかあかあかやあかあかや月             明恵上人 」      中空に かかる 金色の月      この 栂尾(とがのお)の       石水院(せきすいいん)の 縁側に      ひとり 座禅して      月の光に このからだと       こころを 曝す      ああ 天上天下      あるのは       ただ 月と 吾(われ)      そうして 月も 吾も      阿留辺畿夜宇和(あるべきやうわ)      吾の魂は浮遊して   金色の月となり        月もまた吾に入り込み  吾そのものとなる      すべては      あかるく あかるく あかるく      そして ひとつに         明恵上人樹上の図