「古今和歌集 恋歌十選」

 「ほととぎす鳴くや皐月のあやめぐさ


 あやめもしらぬ恋もするかな

           詠人不知 」


「すみの江の岸に寄る波夜さへや

 夢のかよひぢ人目よくらむ

         藤原敏行 」


「思ひつつ寝ればや人の見えつらむ

 夢と知りせば覚めざらましを

          小野小町 」


「露ならぬ心を花におきそめて

 風吹くごとに物思ひぞつく

         紀 貫之 」


「ありあけのつれなく見えし別れより

 あかつきばかり憂きものはなし

           壬生忠岑 」


「君や来し我や行きけむ思ほへず

 夢か現か寝てかさめてか

         詠人不知 」


「かきくらす心の闇にまどひきに

 夢うつつとは世人さだめよ

         在原業平 」


「月やあらぬ春や昔の春ならぬ

 わが身ひとつはもとの身にして

         在原業平 」


「色見えでうつろふものは世の中の

 人の心の花にぞありける

          小野小町 」


「人知れず絶えなましかばわびつつも

 無き名とぞだにいはましものを

           伊 勢 」






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