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「木の下隠り」

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 秋山の 木の下隠り 逝く水の  われこそ益さめ 御思よりは                鏡 王女      あの 貴いお方を 慕いながら      わたくしは 錦繍の秋の山に       ひとり 踏み分けて 入ります      清冽な小川が       金色と茜色に染まった 紅葉の下を      流れ逝きます      わたくしの あのお方への 想いも      木の下の流れのように      表に現れなくとも しめやかに      流れてゆきます      それは あの方の       わたくしへの み想いよりは      さらに いや増して       溢れんばかりの 情愛を湛えて      あのお方にだけ       注ぎこんでゆく流れです      あの 中大兄の皇子さま にだけ 嵯峨野・宝篋院

「幸せな人になる為には」

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「世の中には、蕪村を知っている幸せな人と  蕪村をまだ知らない不幸せなひとしかいない」  という文章を、  森本哲郎の「月は東に-蕪村の夢・漱石の幻」  で読んだ記憶があります。  森本哲郎と私自身の美的感覚が近しいのか、  彼のこの本で、すっかり蕪村のファンになったのは、  もう随分前のことでした。 「愁ひつつ 丘に登れば 花いばら」  この句を読んだときなど、  これはあたかもゲーテの 「童は見たり 野中のばら」  の世界ではないかと、思ったものでした。  郷愁の詩人「与謝蕪村」が、  いかに純粋な心と温かい歌唱力を  生涯持ち続けていたかが、  これらの句でもよく判ります。   野ばら