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2月 20, 2021の投稿を表示しています

「あしひきの」

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 「あしひきの 山桜花 日並(ひなら)べて       かく咲きたらば いと恋ひめやも」    足比奇乃 山櫻花 日並而       如是開有者 甚戀目夜裳             山辺 赤人 山桜は染井吉野と比べると、花の散るのは少し遅いと思われますが、それでも万葉時代の人も、桜の花の咲く期間が短いが故に、桜花を愛惜したようです。 「日並べて」とは何日の続けてという意味のようです。 「いと恋ひめやも」は、こんなの恋しく思ったでしょうか、いいやそうではないでしょう、という意味の反語ですね。 龍安寺 鏡容池

「かのことは」

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 「かのことは夢幻(ゆめまぼろし)か秋の蝶              鈴木 真砂女 」      秋の蝶が ふうわりと 庭先を       夕陽の方へと 飛んでゆく      あの人と 一緒に 蝶を見たのは      嵐山の 大河内山荘      紅色の毛氈で 薄茶を 喫していた       そのとき      蝶が 一片(ひとひら)      夕暮れ迫る 京洛の町並みのほうへと      風に 吹かれるように 浮遊していった      ああ あの人と わたしのことは      あれほどの 熱い想いで      あったのに      あのときの ふたりは      いま いずこ      夢 幻 よりも はかなく      わたしの 秋の季節も      この 秋の蝶のように      ふうわりと そして ゆっくりと       暮れて ゆくのだろう 大河内山荘 四阿