「夢の上にかかる銀河」

 「お米は茶器を引いて台所へ出た。


 夫婦はそれぎり話を切り上げて、

 また床を延べて寝た。

 夢の上に高い銀河(あまのがわ)が

 涼しく懸かった。」


       夏目漱石 「門」


東京の市井の一隅、崖下の借家で、

過去の不倫の罪におびえながらも、

身と心を寄せ合って今の小さな幸福を守る

宗助・お米夫婦の姿

    芳賀 徹  「詩歌の森へ」


「別るるや 夢一筋の 天の川

            夏目漱石 」


   かっての東京の市井の一隅には

   かように夜の夢の上に

   高く銀河(あまのがわ)が

   懸かるごとき

   美しい夜もあったのである

   いまやその夢は

   いずくへ





コメント

このブログの人気の投稿

「虹のような言葉の織物」

「芭蕉と蕪村と虚子」

「回 文」