「慥かな眼」
「美」ということについて、これほど直截に、さわやかに語った人が他にあるだろうか。白洲さんの文章は、練達の剣士の剣舞を見ているような味があった。風に揺れる花のようだが、近寄ると切られるという気合がこもっていた。日本のすべての人に読んでいただきたい書物である。 河合隼雄 人間の「感受性」というものは、普通は年齢を重ねるとともに弱まってくるものと考えられています。「感受性」と「慥かな眼」の双方を死に至るまで維持することは至難の業でしょう。 しかし白洲正子で言えば、本物を見極める眼を磨きに磨いてきた結果、若い時とは比較できないような「慥かな眼」を持つようになったのだと思います。その「慥かな眼」と様々な経験の積み重ねで、白洲正子の感受性はなくなる直前迄とても豊かであったのではないかと思われます。