「春ごとに 花のさかりは」

 「春ごとに 花のさかりは ありなめど


 あひ見むことは いのちなりけり

      詠人不知(古今集) 」

  くり返し くり返し 

  春の訪れるたびに 桜の花は 

  命とばかりに 美しい花を咲かせる

  あおによしの寧良(なら)

  と詠われた天平の御代も 

  平安から鎌倉にかけての

  動乱の中に咲いた新古今の御代も

  そうして我らの生きる今も

  また今から一千年後にも

  この地上が生きとし生けるものを育み

  夜空の群青色の王冠たる星空を戴くかぎり

  桜はその命たる華麗な花を

  咲かせつづけるだろう

  われらモータル(死すべき)な

  存在にとっては

  この永遠に常永久(とことわ)に

  咲きつづける桜花を

  愛(め)でることが

  自らの命を よりよく感じるときなのだ

  桜花という自然の命と

  己が命を 

  ひとつに 重ねつつ

京都 原谷苑


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