「采女の袖」

 采女の袖ふきかへす明日香風 

       都を遠みいたづらに吹く

            志貴皇子


嘗てこの明日香に都のあった時

この地に吹く風は

美しい采女の袖を翻したものだ

今やその都も藤原京へと遷都し

明日香風は都遠しと

ただいたずらに吹いている


石(いわ)ばしる垂水の上の早蕨の 

     萌えいずる春になりにけるかも

          志貴皇子


志貴皇子は芝基皇子とも呼ばれるが、

天智天皇の第七皇子として生まれ、

皇位とは関係のない文化人としての人生を送った。

しかし天武-持統朝が称謙天皇の代で

途絶えてしまったときに、

天智系の復活として志貴皇子の皇子である

白壁王が光仁天皇として即位した。

そして志貴皇子は御春日宮天皇もしくは

田原天皇として追尊された。

今の天皇につながっておられる方である。

「采女の袖」の歌碑







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