「雪月花の時」

 「雪月花の時、最も友を思ふ」  白楽天(白居易)

THE TIME OF THE SNOWS, OF THE MOON, OF THE BLOSSOMS

THEN MORE THAN EVER WE THINK OF OUR COMRADES.

 

原詩は下記の通りです。

 

寄殷協律

五歳優游同過日 一朝消散似浮雲 

琴詩酒伴皆抛我 雪月花時最憶君  

幾度聽鷄歌白日 亦曾騎馬詠紅裙 

呉娘暮雨蕭蕭曲 自別江南更不聞


殷協律(いんきょうりつ)に寄す 
         
五歳の優游 同(とも)に日を過ごし
一朝消散して浮雲に似たり
琴詩酒の伴(とも)皆我を抛(なげう)ち
雪月花の時 最も君を憶(おも)ふ
幾度(いくたび)か鶏を聴き白日を歌ひ
亦た曾て馬に騎(の)

紅裙(こうくん)を詠ず

呉娘(ごじょう)の暮雨(ぼう)

蕭蕭(しょうしょう)の曲
江南に別れてより更に聞かず

五年の間、君と過ごした楽しい日々は、ある朝、浮雲のように消え去ってしまった。

琴・詩・酒を楽しんだ仲間は、皆私の前からいなくなり、

雪・月・花の時期には、君をひたすら思い出す。

何回「黄鶏」の歌を聴き、「白日」の曲を歌ったろう。

馬にまたがり、紅衣を着た美人を詠じたこともあった。

呉娘の「暮雨蕭々」の曲は、江南で君と別れてから、一度も聞いていない。

※殷協律:白楽天が杭州、蘇州刺史だった時の属官。

 ○大和二年(828)、一時洛陽に赴いた時の作。

○詩を寄せた殷協律は、杭州・蘇州での属官にして遊び仲間。

○ここでは特に江南での遊びを懐かしんでいる。

 この詩句がもととなり、「雪月花」は四季の代表的風物をあらわす日本語として定着した。

いくとせの いく万代か 君が代に 

雪月花の ともを待ちけん

(式子内親王『正治初度百首』)

白妙の 色はひとつに 身にしめど 

雪月花の をりふしは見つ

(藤原定家『拾遺愚草員外』)


コメント

このブログの人気の投稿

「虹のような言葉の織物」

「俳人・杉田久女」

「回 文」