「伎芸天」

諸々のみ佛のなかの伎芸天

  何のえにしぞ我を見たまふ

        川田 順

数多のみ佛の中で

伎芸天は極めて少ない

有名なのは

秋篠寺の伎芸天である

数多くの文人たちが

この夢見心地で

法悦に浸っているみ佛と

その肢体の醸し出す

浄化された楽の音に

 感動して

短歌や俳句を

捧げている

六三歳の川田が

何のえにしか

三十代後半の

大学教授夫人俊子と出会った

老いらくの恋は

川田が六八歳の時に実を結ぶ

川田にとって

俊子は伎芸天であった

伎芸天





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